• 2020年1月29日
  • 2024年12月10日

胚のグレードについてあらためて

こんにちは培養部です。

以前から、体外授精を受けた患者さんから、無事に受精卵を凍結保存できたことをお話させて頂く際に、その「凍結胚のグレード」について「いちど説明を受けたけど、いまいちよくわからない」とか「忘れてしまいました」といったことで、再度質問されることがよくあります。

実際にARTに進まれる方々だけでなく、このクリニックに通われている方々みなさんも経験おありかと思いますが、いままで聞いたこともなかった薬や注射、血液検査の結果やその数値など、ややこしい数字や名称を言われても、おそらくよくわからない、新しい情報量が多すぎて、あたまがパンクしてしまうのではないかと。患者さんにとっても、とてもせわしない状況なので、それは仕方がないと思います。
そこで今回はあらためて受精卵の「グレード」についてお話しさせて頂きます。

まずグレードの必要性として、受精卵=胚には1個1個それぞれ成長に差があって、その成長速度や形態に違いが現れます。その成長具合の良し悪しによって、これまでのARTの過去のデータを基にした統計と照らし合わせると、その形態ごとの妊娠率が分かります。つまりそれぞれの胚の質、優劣が分かるため、妊娠しやすい胚から移植していくことによって時間的なロスを無くして効率化できます。ARTを受ける患者さんにとって、とくに女性側の年齢は顕著に卵子の質にかかわってくるので、時間的なロスについてはシビアに考える必要があります。その意味でもグレードなどの指標によって効率化を考えることは重要なのです。


体外授精では、「採卵」後に受精操作(ふりかけ法or 顕微授精)をして、受精したことを確認した胚を6日間、培養庫で培養します。そしてそのまま分裂を続けて、5日目、または6日目頃に「着床」の準備ができた「胚盤胞」に成長するので、この時点でいちど凍結保存します。ARTの治療方針によっては培養開始から3日目程度の若い胚(初期胚)で凍結することもあります(この場合、おなかの中で胚盤胞になった後、着床します)。

そしてこの時に、上の図のようなVEECK分類とGardner分類といったそれぞれの分類方法で胚の評価をします。

VEECK分類
初期胚の評価基準は①分割した細胞が均等に分かれているか ②分割したフラグメンテーション(細胞が断片化したもの)がないか。この2点を見て評価します。このグレードが良くないとやはり妊娠率が低くなります。グレード1-2であれば年齢によって多少ばらつきますが、だいたい25-30%の妊娠率を見込めます。

Gardner分類
胚盤胞の成長段階1-6の数字(図では胚のステージと表記)と、ICM(将来的に胎児になる部分)とTE(胎盤になる部分)の形態的な評価をA~C(良~不良)ランクをつけてグレードとします。こちらもやはり妊娠率と相関があり、年齢によりますし、グレードにより成績に差があるため大体ですが、Cがつくものだと25-40%程度、BやAがつくものだと40-60%の妊娠率を見込めます。

これらの分類法はあくまで成長した胚の形態だけをみて評価をするのですが、かなり以前から世界的にも使われており、かなり実績のある評価法であるため、現在でもほとんどの不妊治療施設で使われています。

簡単ですが今回はここまでで。次回は「胚のグレードUP=妊娠率UPのために。いますぐできること」のようなテーマでお話しできればなと考えています。

培養部 SAKAMOTO

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