- 2018年12月19日
学会に参加してきました
こんにちは。培養部です。
今回、12月の初めに学会に参加したので、そこで聴講してきた内容の一部を紹介します。
その会は学会といっても日本産婦人科学会や日本卵子学会のようなたいそうなものではなく、2-30人規模の小さな研究会で、卒業生や教授など身内だけで集まって開催している研究会です。
わたしもOBという関係からたまに参加しているのですが、こういった小規模の研究会の利点としては、研究途中の未完成な研究内容であっても気軽にお話してもらえることにあると思います。
それはある意味、現在の医療研究の最先端のお話が聞けるということです。
ライフサイエンス技術研究会
参加費はかかりますが一応、一般の方も聴講できますので、開催時期など大々的に宣伝などは全くしていませんが、もしいつかどこかでお見掛けする機会があれば、その節はぜひご参加頂ければと思います。
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今回の研究会のテーマは「アンチエイジングとART」でした。
テレビや雑誌などのメディアでもよく取り上げられるアンチエイジング。
最近の健康をテーマにしたバラエティー番組などでは、必ずといっていいほどこのワードを絡めて番組を構成していますね。
やはりそれだけいつまでも若く、いつまでも健康に、ということは私たちに人間にとって永遠のテーマなのかと。
わたしも気が付けばアラサーをとうに過ぎ、
もうお世辞にも若いとは言ってもらえない、いいトシになって参りましたが。
近年のテレビのアイドルさんやタレントさんの低年齢化が顕著になり、まだ子供じゃん みたいな子ほどもてはやされ、祭り上げられてすらあるように見受けられます。
あといわゆる「美魔女」さんとか。
なんだか若いことが偉い、みたいな風潮ってちょっとどうなんだろう、と思い。
年齢重ねて、人間としての「厚み」が増して、年相応に生きるって、すごく素敵だなと、個人的には思っているのですが。
とはいえ年々体力は低下して、乾燥肌に悩まされ、食も細くなり焼肉ではもっぱらハラミの身としては実害があり、生活に支障をきたしているわけで。
でもそんな妬み嫉みにも似たようなことを宣っていても今を生きる若者には疎まれるだけですし。
少し気乗りはしないですが、アンチエイジングについて少し向き合ってみたいと思います。
前置きが長くなりましたが、
それでは。
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検索をかけると、
「アンチエイジング」とは?
日本語では「抗老化」「抗加齢」。見た目や身体のエイジング曲線の角度を少しでもゆるくすること。つまり「老化」を止めるのではなくスピードを抑えること。
とありました。
アンチエイジングをART(生殖補助医療:不妊治療)に絡めてみよう、という研究発表はたびたび見かけるのですが、今回はアンチエイジングをメインテーマとして沢山の興味深いご講演がありました。
今回はそのなかでウィメンズクリニック神野の院長、神野正雄先生のご講演がとくに面白かったので、詳細なデータ等を載せるのは色々と問題かと思いますので、簡単に概要だけご紹介いたします。
タイトルは
「不妊治療・抗老化・健康・美白は表裏一体 ~高度生殖補助医療における最新知見より~」
です。なかなか壮大なテーマです。
本題に入る前にまず予備知識として、
「老化する」とはどういうことか?というお話です。
生物は生きるために細胞のなかで代謝(糖を分解)を行ってエネルギーを産生し、生命維持しているのですが、糖代謝の際にはエネルギーとともに老廃物が出てきます。
細胞にはその老廃物(AGE:老化物質)を自ら除去する機関があり、それが機能することで、それらをリセットすることができます。
しかし、糖代謝をすればするほど、つまり長く生きていればそれだけで、どんどんAGEが細胞内に蓄積してきます。
そして最終的にAGEを除去する機関そのものにAGEが蓄積してしまい、AGEを除去する上手くいかなくなってくるそうです。
掃除機で例えると、フィルターが詰まって吸引力が低下している状態ですね。
吸えない掃除機、AGEに侵された状態で、いくら掃除してもAGE物質は除去しきれず、さらにどんどんAGEが蓄積していきます。
そして最終的には体中の細胞がAGEに侵されていき細胞が老化していきます。
それが老眼だ加齢臭だ白髪だほうれい線がだ物忘れがひどいだ脂身はもう食べられねえだ につながるのだそうです。
これがいわゆる老化現象の正体だと。
そして恐ろしいことに、わたしたちが普通に生活しているなかで、このAGEの蓄積を通常よりも加速させてしまう行動をとっているそうです。
それがこちらです。
・運動不足
・睡眠不足
・喫煙
・飲酒
・食生活
・ストレスをためること など
現代社会にいきるわたしたちにはこの生活習慣の改善はなかなかむずかしいです。
一人暮らしのわたしなどは、仕事で遅くに帰宅→外食→深夜1時頃就寝
この時点ですでに相当やってしまっていることになります。
ちなみに先生が推奨する目安は以下です。
いわく普通の生活をしていれば全然問題ないとおっしゃっていましたが、はたして。
・運動:1日30-40分の軽い運動(ウォーキング程度)
・睡眠:7-8時間(成長ホルモン分泌の関係で最初に日光を浴びてから16時間後の就寝が望ましい)
・喫煙:0本(1本増えるごとに加速度的に悪くなる、とのこと)
・飲酒:3日間隔をあければたぶん大丈夫(神野先生談 ごく個人的な意見かもしれません。経験的、理論的には炭酸水を飲むと酒を飲みたい欲求が我慢できるそうです。炭酸による血管拡張効果から)
・食生活:米を中心とした日本食を(血糖値の上昇がなだらか)
※基本的に砂糖の取りすぎは×(甘いもの、血糖値が急上昇する不健康なものはNG)、目安は1日25グラムまで(ちなみにコーラ1本で約50g、、、)
・ストレス:仕事をとるか健康をとるかどちらか、だそうです。
(無理やりにでも笑顔を作る、などの根性論や。趣味をもつ、アロマやエステなどメンタルケアもかなり効果あり)
なかなかハードルが高いと思いました。
アンチエイジングの為に大好きなラーメンと就寝前の○Tube鑑賞を諦めるは正直厳しいです。(血糖値急上昇×、液晶画面のブルーライトで成長ホルモン分泌のバランスの乱れ)
ちなみに当の神野先生はというと、都合上、写真をあげることはできませんが、ホームページのお姿を拝見する限りではその効果は絶大ではないかと。
御年60うん歳、老眼なし、白髪染めしたことない そうです。
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本題です。
今回の発表のなかで「インシュリン抵抗性の改善」のすすめについてとくに強調してお話されていました。
詳しいことは割愛しますが、まとめると。
インシュリンとは、食事をして血糖値があがると分泌される、血糖値を一定に維持するホルモンです。(糖尿病患者がよく注射しているあれです)
インシュリン抵抗性とは、そのインシュリンの感受性が鈍くなる、ようするに効かなくなり、一定に保たれるべき血糖値の調節が上手くいかなくなることです。
その原因とは、そう老化(AGEの蓄積)です。
AGEが蓄積する →インシュリン抵抗性増す →糖代謝に異常 →AGEが蓄積する
という悪循環が起こるそうです。
糖代謝は血糖値のはなしだけではなく、全身の細胞ひとつひとつにも関係しています。
そのため、結果として症状が現れていなくても(例えば糖尿病や肥満)、エイジングが進んで、インシュリン抵抗性があがっている人はとても多いそうです。
さて、ここからどうARTに絡めるかですが、
そもそも人間、生物というものは以下の2つの目的で行動しています。
①生きること(生命維持)
②子孫を残すこと
そしてこの2つの目的には優先順位があって、まず①の生命維持に警告がでた場合、目的②の子孫を残すことは優先されない、エネルギーの供給が滞るそうです。
つまり、まずは身体が健康でないと妊娠もしづらくなる。
不健康 ≒ 不妊 ということです。
このことは実際にこれまで他の様々な研究のなかでそれが証明されていますね。
BMI値と不妊。糖尿病と不妊。睡眠不足と不妊。喫煙と精子異常。
ストレス社会?年々男性の精液所見が低下傾向にあり。
などなど。
つまり生活習慣の悪化によっておこるAGEの蓄積 →インシュリン抵抗性悪化 → 老化→ 不健康 →不妊
ということが言えるそうです。
実際に生活習慣の改善指導とインシュリン抵抗性に対して対策したところ、
とくに不妊治療の分野では高齢と分類される方々の不妊に対して効果があったそうです。
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先生は発表のなかでまずは「生活習慣の見直し」を強く説いておられました。
不健康(AGEが蓄積し正常な糖代謝が出来なくなっている状態)な男性は見た目の精液所見が低下するだけでなく、内在するDNAへのダメージが顕著であるし、女性も場合も同様です。
逆に健康(AGEの蓄積が少ない)であれば、外見的にも美肌が保たれで若々しく、メタボにもなり得ないし、生命維持に余裕が生まれるので、生殖能力も維持される、と。
「生活習慣を見直しなさい」と。
いろいろと耳の痛い講演でした。
培養士 SAKAMOTO