• 2026年9月24日

「原因不明」の不妊、体外受精で初めて見えてくること

― 問題が見つからないのに、なかなか妊娠しない
検査では特に異常がないのに、体外受精を勧められた ―

不妊治療を受けている方の中には、このような疑問を感じたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

排卵障害や卵管の通過障害、精子の状態など、一通り検査を行ってもはっきりとした原因が見つからない場合、「原因不明不妊」といいます1)

では、検査に異常が見られなかったのに、なぜ体外受精に進むのでしょうか。

もちろん、妊娠を目指すための治療ですが、体外受精を行うことで、それまでの検査では分からなかった「妊娠までのどの段階でうまくいっていないのか」が見えてくることがあります。

妊娠までの過程には、

卵子が排卵される → 卵子が卵管に取り込まれる → 卵子が成熟している → 精子と卵子が受精する → 受精卵が胚として発育する → 子宮内膜に着床する

という、いくつものステップがあります。

体外受精では、これまで直接確認することが難しかった「卵子」「受精」「胚の発育」などを実際に観察できるため、始めてから見えてくることがあります。

1. 卵子のピックアップがうまくいっていない可能性

子宮卵管造影検査で卵管が通っていても、排卵された卵子を卵管采(卵管の入り口)がうまくキャッチしているかまではわかりません。こうした卵子を取り込む過程は、現在の検査では確認することが難しい部分です2)

体外受精では、卵巣から卵子を直接採取するため、この過程を必要としません。頻度は多くないと考えられますが、自然妊娠、人工授精では必要かつ確認することができないこの過程を、体外受精では回避することができます。

2. 卵子の状態を観察できる

排卵したからといって、卵子の状態がすべて受精に適しているかはわかりません。

体外受精では、採卵した卵子の成熟度を確認できます。稀に、排卵誘発を行って複数採卵しても、成熟卵子がほとんど含まれていないケースも存在します。

3. 卵子と精子が出会っても受精しないことがある

精液検査の数値に問題がなくても、実際には受精が起こらないケースがあります。受精には多くのステップがあり、精子側・卵子側・遺伝的要因など、複数の要素が関わります3)。体外受精では「卵子はある、精子もある、でも受精に至らない」という事実が確認できるのも、体外受精ならではです。

4. 受精しても、胚(受精卵)が育たないことがある

受精卵は細胞分裂を繰り返しながら胚盤胞という段階へ進みますが、すべてが順調に育つわけではありません。途中で発育が止まってしまう胚もあります。染色体異常、卵子・精子の要因、細胞内の機構など、理由は一つとは限らず複雑に絡み合っています3)4)5)。そのため、原因を特定することはできないことが多いのですが、体外受精では、どこで止まったのかが観察できます。

5. 着床というブラックボックス

どれだけ良い胚があったとしても、胚が子宮内膜に着床しなければ妊娠は成立しません。

着床には、胚の状態、子宮の形態、子宮内膜の状態、ホルモン環境、胚と子宮内膜のタイミングなど、多くの要素が関わっています6)

子宮内膜の厚さだけではなく、「受容能」という子宮側のタイミングの問題もあります6)。ここも通常の検査では見えにくい部分です。

原因不明は、原因がないというわけではない

「原因不明不妊」という言葉を聞くと、まるで「どこにも問題がないのに妊娠できない」という意味に感じてしまうかもしれません。

しかし実際には、一般的な検査だけでは確認できない妊娠までの過程がいくつもあります。体外受精では、卵子や胚の状態を観察することで、これまでわからなかったことが明らかになる場合があります。

気になることやわからないことがありましたら、診療の際にお気軽にご相談ください。

培養部 R.I

参考文献

  1. ESHRE Guideline Group on Unexplained Infertility. Evidence-based guideline: unexplained infertility. Hum Reprod. 2023;38(10):1881-1890. PubMed
  2. Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine. Fertility evaluation of infertile women: a committee opinion. Fertil Steril. 2021;116(5):1255-1265. PubMed
  3. Wei Y, et al. Genetic mechanisms of fertilization failure and early embryonic arrest: a comprehensive review. Hum Reprod Update. 2024;30(1):48-80. PubMed
  4. Sfakianoudis K, et al. Molecular Drivers of Developmental Arrest in the Human Preimplantation Embryo: A Systematic Review. Int J Mol Sci. 2021;22(15):8353. PubMed
  5. Cimadomo D, et al. Preimplantation embryos that arrest in vitro: phenotypes, causes, and possible therapies. Fertil Steril. 2026;126(2):218-229. PubMed
  6. Hiraoka T, et al. Current perspectives on endometrial receptivity: A comprehensive overview of etiology and treatment. J Obstet Gynaecol Res. 2023;49(10):2397-2409. PubMed
  7. Lessey BA, Young SL. What exactly is endometrial receptivity? Fertil Steril. 2019;111(4):611-617. PubMed
  8. Krisher RL. Present state and future outlook for the application of in vitro oocyte maturation in human infertility. Biol Reprod. 2022;106(2):235-242. PubMed

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