- 2018年6月14日
倫理講習会を受講してきました。
こんにちは。培養部です。
以前このブログでも少し触れましたが、
先日、日本卵子学会主催の倫理講習会に参加してきました。
この倫理講習会は年に数回行われていて、
胚培養士資格を更新するひと、これから資格を取ろうと思っているひとを対象としています。
なぜなら、胚培養士資格を認定している日本卵子学会から『少なくとも1回は本学会主催の「倫理」に該当する講習を受講していること』とされていて、この「倫理」については胚培養士の有資格者には必須の知識となっているからです。
では「倫理」とは具体的にどんなことを学ぶのか、簡単に紹介しますと、
例えば次のようなものがあります。
「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」
「ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する倫理指針」
※文部科学省ホームページより
(http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/seisyoku_hojo.html)
ヒトの受精胚の扱う医療従事者にはこれらの倫理指針の遵守が求められています。
そもそもなぜこういった講習会を受けて、倫理を学ぶ必要があるか、というと。
実は現在日本では、当院で行っているような生殖補助医療を直接規制する法令(法律や政令)は存在しない状態なのです。
規制がないということは、全国にたくさんある不妊治療施設の先生たちが、それぞれ独自の方針で不妊治療を行ったりすることで、治療する先生によって治療方法が異なっていたり、治療成績が病院によってバラバラ、といったことが起こってしまいますが、
実際にはそういった病院はほとんどありません。
どの病院も同じように、意識の高い治療方針と倫理をもって治療を行っています。
では、規制が存在しないのに、数多くある不妊施設がそれぞれどうやって技術や情報を共有しているのかというと。
現状日本では、先にあげた倫理指針に加え、「日本産婦人科学会」などの大きな学会が出している見解(いわゆる会告)やガイドラインに従って、みんなが自主的、自律的に規制しています。
ようするに実際に現場で医療を行う医師や医療従事者たちが、自分たちで決めたルールを自分たちできちんと守っているということです。
また、学会への症例報告の義務化がなされているため、全国の不妊治療のデータが毎日きちんと蓄積されています。
そして、毎年治療成績が集計されてデータが公開されるので、自分たちの病院との成績を比較することができるようになっています。
もちろんこういったシステムは世界ではかなり「まれ」なケースみたいですよ。
さすが日本人ですね。
※日本産婦人科学会 倫理に関する見解
(http://www.jsog.or.jp/ethic/index.html)
とくに良い例としてあげられるのが2008年4月に示された「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」です。
この見解によって、移植する受精卵を原則1個まで(条件により2個までOK)と決めて、全国の不妊治療施設でこれが守られました。
その結果、当時の生殖補助医療分野では問題となっていた多胎妊娠率が大きく低下し、改善されたことでヨーロッパ諸国と並ぶ安全性に配慮した先進的な医療になりました。
※多胎妊娠
2人以上の胎児が同時に子宮内に存在する状態、双子、3つ子や六つ子など。多胎妊娠の場合は,妊娠中毒症を起こしやすく,また早産となって未熟児の生まれる率も高くなる。
いま生殖補助医療の分野はどんどん新しい技術の開発や治療の取り組みに対する考え方が見直されるなど、日々状況が変化し続けています。
今回の講習会に参加して「倫理」や「見解」、「ガイドライン」といったもののように、それぞれの自主性、自律性が求められる分野であるからこそ、われわれ生殖補助医療の従事者も常に最新情報を更新していかなくてはしなくてはならないなと、改めて感じました。
これからも高い倫理観をもって不妊治療に取り組んで参りますので、よろしくお願いいたします。
培養部 SAKAMOTO