- 2024年2月13日
- 2026年9月8日
精子の選別方法|マイクロ流体技術・PICSI・HBAテストの違いと費用
当院では、体外受精・顕微授精に用いる精子を選ぶ方法として、マイクロ流体技術を用いた精子選別、PICSI、HBAテストを実施しています。いずれも精子のDNAへの負担を抑えて選別することを目的とした方法で、先進医療または自費診療の対象です。
マイクロ流体技術を用いた精子選別
マイクロ流体技術を用いた精子選別(膜構造を用いた生理学的精子選択術)は、先進医療の対象として告示されている技術です。
特徴1 特殊なメンブレン(膜)構造
目の細かい膜を通過させることで、運動性が高く良質な精子と奇形精子・運動性の低い精子を物理的に分離できます。また、不純物(繊維や結石等)も取り除くことができます。

特徴2 不純物の除去によるダメージの軽減
不純物が原因の活性酸素による酸化ストレスのダメージを軽減し、精子DNA断片化や運動率低下を防止できます。
特徴3 精子への負担軽減
良質な精子は上に泳いでいくという性質を利用して回収するため、より自然に精子を回収することができます。精子への負担を軽減することで、精子DNAが物理的に損傷するのを防ぐことができます。
従来法との違い
従来法は遠心分離器に何度もかけることで、遠心力によって精子とその他を分離します。精子を遠心分離することで精子に圧力がかかり、少なからず精子のDNAにダメージがあることが報告されています。マイクロ流体技術を用いた方法はDNA損傷を極力抑えるようにして精子を選別する点が従来法と異なります。

| 方法 | 選別の仕組み | 精子への負担 |
|---|---|---|
| 従来法(密度勾配遠心分離法) | 遠心分離器にかけ、遠心力で精子とその他を分離する | 作業工程が多く、遠心分離による圧力がかかる |
| マイクロ流体技術 | 目の細かい膜を精子が自ら泳いで通過し、通過した精子だけを回収する | 遠心分離による物理的な圧力がかからない |
精子の頭部には遺伝情報であるDNAが含まれており、精子のDNAに損傷(断片化)があると、精子の質が低下し、自然妊娠や人工授精、体外受精での妊娠率が下がってしまうので、いかに精子にダメージを与えずに扱うかというのは重要です。
精子処理をマイクロ流体技術を用いた方法に変えた場合、従来の密度勾配遠心分離法と比較して、精子DNA断片化率、着床率、臨床妊娠率、継続妊娠率などの項目において良好な結果が得られたという報告があります。
当院では、体外受精を受けられる方を対象に実施しています。
HBAテスト(精子の成熟度を調べる)
成熟した精子は、自然妊娠において、ヒアルロン酸に保護された卵丘細胞と透明帯を貫通して卵子に受精する能力があります。これらの精子はDNAの損傷や断片化がほとんど起こっていない精子で、受精後の胚発育や染色体数に良い影響を与えるとされています。
精子のDNAや染色体が正常かどうかを人の目で判別するのは困難です。そこで、正常な精子がヒアルロン酸に付着する性質を利用し、ヒアルロン酸でコーティングしたスライドガラスを用いて、精子の質・成熟度・受精能を定量的に評価します。精子が付着した割合をHBAスコアとして出します。ヒアルロン酸に付着する精子が少ない場合、HBAスコアが低い、つまり受精・妊娠に適した精子の割合が少ないと判定します。
当院ではHBAスコアが65%未満の場合、PICSIをおすすめしています。それ以外の方でも、ご希望や過去の培養成績に応じて実施できます。
PICSI(ヒアルロン酸で精子を選ぶ)
PICSIは、あらかじめ所定の位置にヒアルロン酸が固定されたディッシュを用いて精子を選別し、そのディッシュ上で顕微授精(ICSI)を行う方法です。
顕微授精では、多くの場合、形態と運動性の評価のみで精子を選別します。HBAテストとPICSIでは、ヒアルロン酸への結合という生理学的な性質を使って選び、定量的に評価します。これにより早期流産のリスクを軽減できるとされています。
3つの方法の費用
| 方法 | 先進医療として実施する場合(税抜) | 自費診療の場合(税込) |
|---|---|---|
| マイクロ流体技術を用いた精子選別 | 40,000円 | 44,000円 |
| PICSI | 30,000円 | 22,000円(ICSI代に加算) |
| HBAテスト | 告示なし | 9,460円(個数にかかわらず) |
いずれの方法も、採取した精液から用いる精子を選ぶ工程であり、患者様のお身体への侵襲はありません。ただし、選別を行っても受精や妊娠が得られるとは限りません。
マイクロ流体技術を用いた精子選別とPICSIは先進医療として告示されているため、保険診療との併用が認められています。先進医療にかかる費用は自己負担ですが、東京都の不妊治療費助成の対象になります(要件あり)。費用は変更される場合がありますので、最新の金額は「治療費」ページをご確認ください。
男性側の検査については「不妊検査」ページ、治療については「男性不妊症の治療」ページをご覧ください。
興味のある方、質問のある方はお気軽にスタッフまでお問い合わせください。
よくある質問
マイクロ流体技術とPICSIを同時に行えますか。
行えます。当院では両方を同時に実施しています。
マイクロ流体技術とPICSIはどちらを選べばよいですか。
目的が異なります。マイクロ流体技術は精子を回収する段階でDNAへの負担を抑える方法、PICSIは顕微授精に使う1個の精子を選ぶ方法です。HBAスコアが65%未満の場合はPICSIをおすすめしています。どちらを用いるかは精液所見と治療経過から判断します。
精子選別を行えば必ず妊娠しますか。
妊娠を保証するものではありません。良好な結果が得られたという報告がある方法ですが、妊娠には精子以外の要因も関わります。
培養部 SAKAMOTO