• 2019年8月1日

日本不妊カウンセリング学会に行ってきました

こんにちは 培養部SAKAMOTOです。

先日、第18回 日本不妊カウンセリング学会の学術集会に参加してきました。

この学会の特徴として、患者さんと対話しメンタルケアを行う心理カウンセラーだけではなく、不妊治療に関わる全てのスタッフが、患者さんとの接し方や患者さんから受ける意見などについて事例を報告したり、情報共有して議論したりする場になっており、広い意味でのカウンセリングという名称になっています。

そのため、不妊治療専門の医者や胚培養士だけでなく、看護師や鍼灸師、もちろん心理カウンセラーなど、多分野の方々が参加します。それにあわせて毎年、それぞれの分野が中心となったテーマを決めて、各分野の専門家を呼んで講演が行われます。

第18回大会の今年は鍼灸と不妊治療をテーマとして、鍼灸師の方々が中心となって講演されていました。わたしも全然馴染みのない分野でしたが、最近、都内の不妊治療クリニックでも、鍼灸治療室という部署を開設したところがあると聞いたことがありますので、将来的にはもしかしたら鍼灸は不妊治療の治療効率を上げる重要な補助医療になる可能性があるのではないかと思っています。

そこで、今回はこの学会で学んできた鍼灸の不妊治療への影響について少しだけご紹介します。

◎鍼灸治療とは
人体の特定の治療点(ツボ)に鍼またはお灸を使って機械的、または温熱的な刺激を与え自然治癒力を高めて、疾病の治療や予防などを目的として行われる、中国を起源とした伝統医療法です。日本ではいわゆる漢方などと同じ東洋医学のひとつとして「東洋医学系物理療法」として位置づけられています。とくに「鍼」治療では、欧米を中心として臨床研究が行われ、鍼治療の治療効果を裏付けるたくさんの研究論文が出ており、身体の様々な不調に対する有用性が明らかになってきているそうです。

※治療により改善がみこめる疾患の一例
神経系(神経痛)、運動器系(関節炎、リュウマチ)、循環器系(動悸息切れ、高血圧)、呼吸器系(気管支炎、喘息)、代謝分泌系(糖尿病、痛風)、泌尿器系(膀胱・尿道炎、前立腺肥大)、耳鼻咽喉科系(鼻炎、扁桃炎)、婦人科系(更年期障害、乳腺炎、白帯下、月経困難症、月経不順、冷え性)

このように古くから行われてきた実績のある治療法ということで、さきほど言ったように、近年では不妊治療に応用が期待されています。

発表内容については詳しく書くことができませんが、
研究発表のタイトルだけ紹介しますと、次のようなものがありました。

「当院で鍼灸治療を受けられた方の調査報告」※都内 不妊治療クリニック
「統合治療室における鍼灸治療の取り組み」※宮城県内 不妊治療クリニック
「胚移植周期における鍼の併用効果及び安全性について」※静岡県内 不妊治療クリニック&鍼灸院

これらの研究結果の報告内容をまとめると、

・ホルモン補充周期で内膜が6㎜に満たない患者の内膜が厚くなり、改善がみられた
・鍼治療を併用して不妊治療をしても流産率は変わらないため、安全性は高い
・35歳以上の卵巣機能が低下してきている患者の、機能低下を改善した
(良好胚が取れない患者が、取れる確率があがった)
・鍼治療を継続的に行った40歳以上の妊娠率が向上した

いずれの研究もその病院内のみのデータのため、完全に信用できるデータとは言えないかもしれません。ただ、手応えがありそうな結果であることは間違いないと思います。

今回の報告で考えられることは、受精率や良好胚の獲得率など、直接的に成績向上させる効果があるというよりは、成績に悪影響を与える、患者さんが個々に抱える身体のわずかな不調や症状を、鍼治療によって改善することで、結果的に妊娠率の向上につながったのではないかな ということです。
こうした結果をみると、鍼治療は試してみる価値のある治療かもしれませんね。

今回のようにまた面白い話題があったら どんどんご紹介していきたいと思います。

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