- 2021年11月15日
精液所見の改訂
こんにちは!
今回は培養部が担当します。
話題は精液所見についてです。
当院では世界保健機関(WHO)で定められた基準値というものを用いて、精液所見の良し悪しを判断しています。
この基準値は12ヶ月以内にパートナーが妊娠に至った集団の最低限界値を示していて、もし下回ってしまっていても、まったく妊娠できないというわけではなく、『精液所見が基準値を下回る場合は統計学的に妊娠率が低いと言える状態である』と判断できます。逆に、基準より高くても妊娠しにくい場合もあります。
実はこの基準値は2010年に改訂されて以来そのままだったのですが、今年(2021年7月)、なんと約11年ぶりに改訂版が発表されました!
当院の結果報告書には、精液量、精子濃度、運動率、総運動精子数、奇形率(※)の5項目を記載して患者さんにお渡ししています。
※奇形率のみ、当院における基準値を採用しています。
基準値改訂に伴い、当院の結果報告書も11月中旬より基準値の改訂をしましたので、ここで改訂前後の数値を確認してみたいと思います。
改訂前(2010年) | 改訂後(2021年) | |
精液量 | 1.5ml以上 | 1.4ml以上 |
精子濃度 | 15.0×100万/ml以上 | 16.0×100万/ml以上 |
運動率 | 40%以上 | 42%以上 |
総運動精子数 | 15.6×100万個/ml 以上 | 9.4×100万個/ml 以上 |
奇形率(当院における基準値) | 28% 以下 | 28% 以下 |
改訂前は欧米の男性のみのデータを使用していたらしいのですが、今回は中国やエジプト、イランなど、アジアやアフリカの男性のデータも含まれるようになったようです。といっても、当院で特に重要視している精子濃度と運動率含め大きな変化は無かったので、今後も治療方針の基準が大きく変わることはなさそうですね。
ちなみに、精子濃度が基準値以下の場合を乏精子症、運動率が基準値以下の場合を精子無力症と判断しています。
しかし、精液所見は生活習慣やその時の体調によっても変わってくることがあるので、基本的には2回以上の検査で判断する必要があります。
そこで、精子にとって良くないことをいくつかお伝えして、今回のブログの締めにしたいと思います!
①寝不足
②運動不足(激しい運動や筋トレもNGです)
③たばこ、お酒の飲み過ぎ
④サウナ、長風呂
⑤自転車、バイクに長時間乗る
⑥締め付けの強い下着、洋服
⑦膝の上でパソコンを使う
⑧長期間の禁欲
パッと思いつくものだけ書いてみました。
⑧長期間の禁欲は意外と感じる方もいるかと思いますが、新しい精子を作るためにリフレッシュしないと質の悪い精子が増えてしまうため、ある程度定期的に射精した方が良いとされています。
すごく簡単にまとめると、精子はストレスと熱に弱い!です。
生活習慣の改善で、数値に現れなくとも質がよくなる可能性は十分に考えられますので、お心当たりのある方もそうでない方も、気を付けてみてはいかがでしょうか?
培養部 SUZUKI🐻