当院では全ての培養管理にタイムラプスを利用しています。
タイムラプスは保険診療と併用できる先進医療であり、助成金を受けることができます。
しかしタイムラプス培養の可能人数は18名です。
それをを超える場合は採卵順となります。人数超過の場合は一般の培養になります。

次世代タイムラプスインキュベーター

培養庫(インキュベーター)とは、受精卵を培養するために、体内環境に近い環境を再現した専用の培養庫です。CO2濃度などが一定に保たれています。

培養庫写真1
iBIS-NEXT
(国内メーカー製)
培養庫写真2
患者様の受精卵を個室で培養できます

体内と同じ環境にこだわった受精卵専用の培養庫

私たちが生活している空気中の酸素濃度は約21%であるのに対し、受精卵が発育する卵管子宮内の酸素濃度は5%の低酸素環境です。受精卵の培養は、体内と同じ環境である温度(37℃)・酸素濃度5%が一定に保たれた環境であるインキュベーターの中で行います。タイムラプスインキュベーターは従来の培養庫から進化してより受精卵にとって負担が少ない培養環境を提供できます。

特徴①最適な培養環境を維持できる

一般的に受精卵の培養では観察や培養液交換などインキュベーターの外に出す操作が必要となりますが、タイムラプスによって受精卵をインキュベーターの外に出さず観察できるため受精卵にかかるストレスを最低限にします。

特徴②24時間自動定点観察が可能

正常な受精卵には精子由来の雄性前核と、卵子由来の雌性前核の 2つの前核が見えます。しかし2つの前核は、受精後20時間程度で融合して1つとなり消えてしまうため受精卵の成長が早い場合には、観察の数時間前に前核が見えていたにも関わらず観察時に前核が消失していることもあります。

タイムラプスインキュベーターで成長過程を定点で記録することにより、今までにできなかった受精卵成長の詳細な解析が可能となり、より確実な受精判定を行うことができます。

特徴③AIによる前核(受精の有無)自動検出機能による術者間の技量補正

自動解析技術を用いた前核自動検出機能※1を搭載しています。 AI技術を用いることで、観察者の技量の差がなくなり、より正確な受精判定が可能です。

※1 Deep Learning技術により、コンピューターに既存の前核期胚画像の特徴を学習させることで、前核期胚の前核を自動的に認識できるようになります。この技術を用いた前核数自動検出にて0PN、1PN、2PN胚でそれぞれ99%、82%、99%という精度が得られました。さらに、2つの前核が重なってしまい前核数の判別しづらい胚画像からも正確な検出ができたことから、熟練した胚培養士と同等の精度を持つ前核数自動検出システムが開発できたと報告しています。

前核自動検出
前核(2PN)を自動検出

特徴④専用培養dishの使用による共培養のメリット

受精卵は7日間の体外培養を行いますが、一般的なdrop培養では培養液の質を維持するために、途中で2回もの培養液交換が必要でした。培養液交換の操作は受精卵をインキュベーターの外に出し、胚培養士が手作業で交換する必要があり、低酸素環境の維持においても作業効率においても大きな負担でした。

専用培養ディッシュ
DNP製 LinKID®ディッシュmicro25

タイムラプス専用の培養ディッシュは直径7mmほどのくぼみ(well)の中に、さらに受精卵が1つずつ入る程度のwellが25個並んでいます。この特殊な形状により、受精卵を同一well内で25個までグループで培養(共培養)しながら個別に管理することが可能です。この共培養法は、従来法と比較して胚盤胞発生率、良好胚盤胞形成率が有意に高くなるというデータが多数報告されており、受精卵にとってより効率の良い培養が可能となりました。