卵子凍結(未受精卵の凍結保存)について

女性は年齢を重ねるごとに自然と妊娠能力(妊孕性)が低下していきます。 特に現代社会では、キャリア形成やライフスタイルの選択など、多様なライフプランを持つ女性が増えています。未受精卵の凍結保存は、そのような多忙なライフスタイルや将来の子育てに関する考え方、また妊娠に向けての最適なタイミングなどを考慮したい方に向けて適した選択の一つです。

卵子は特殊な凍結保護剤と液体窒素を用いて長期間凍結保存することができ、必要なときまで卵子を保存しておくことで適切なタイミングで妊娠することが可能となります。ただし、採卵に伴う身体への負担や、凍結保存による未受精卵への影響、保存された卵子からの妊娠率、そして妊娠に伴うリスク等を十分理解した上で、これらの選択肢を検討することが重要です。

この治療はあくまでも多様なニーズに応える一つの選択に過ぎないため、必ず妊娠を保証できるものではないことをご了承ください。

※日本産婦人科学会HPに卵子凍結について説明動画がありますのでご参照ください。
日本産婦人科学会 ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ

Grace Bankでは、無料の個別相談を行なっていますので、まずは相談したいという方は是非ご活用ください。

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卵子の数は年齢とともに減少する

卵子は精子と違い新しく作られることはありません。女性の年齢とともに、質、量どちらも低下していきます。卵子の数はお母さんのおなかの中で命を授かった時から減少が始まり、閉経とともにほとんどなくなります。胎生5か月の時がピークで700万個あった卵子は、出生時には200万個、思春期には30万個と急激に減少します。残っている卵子の数は指標となる抗ミュラー管ホルモン、AMH※1という検査で推測できます。しかし、卵子の質を見る検査はありません。若いうちに若い卵子を凍結保存しておくことが卵子凍結の目的となります。

※1 AMH値(抗ミュラー管ホルモン):残っている卵子数と相関するため、卵巣予備機能の指標になります。加齢に伴って低下しますが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方は数値が高くなります。

グラフ:卵子の数と年齢

採取した卵は全て正常に育つわけではありません

採取した卵子は凍結保存し、妊娠を望まれたときに使用します。融解して顕微授精を行い、胚盤胞と呼ばれる状態まで育てたあと胚移植を行います。ただし、採卵で得られた卵子の全てが正常に発育し、妊娠できるわけではありません。融解したときに変性してしまう卵子や、受精しない卵子もあり、最終的に胚盤胞まで育つ個数はかなり減ってしまいます。卵子凍結を行っても、妊娠できるかどうかは不確実で、妊娠率をあげるためには少しでも多くの卵子を保存しておくことも重要な選択の一つとなります。

採卵した卵子を胚移植するまで

卵子凍結の適応

社会的適応による卵子凍結

当院では次の場合に社会的適応による未受精卵子および受精卵の凍結保存を行います。

  • 女性年齢が20歳以上、44歳以下の方が対象

治療の流れ

女性は毎月一個の卵子を排卵します。 そのため、一度に複数の卵子を採取するためには排卵誘発剤を用いる必要があります。 しかし、排卵誘発剤の効果は個人差があるため、年齢、AMH値※1、ホルモン値をもとに排卵誘発剤を選択します。 なお、一度の採卵で得られる卵子の数は個々の体質による差が大きいため、複数回の採卵を必要とする場合もあります。

  1. 初診(採血・超音波検査などを行います)
  2. 排卵誘発
  3. 採卵
  4. 卵子の凍結保存
  1. 初診前に卵子凍結保管サービス 
    Grace Bankに会員登録(登録はこちらから)
  2. 初診:感染症検査・AMH検査をします。ご希望のタイミングで次の段階に進みます
  3. 月経開始3日目以降、卵子育成、排卵誘発のための自己注射
  4. 月経9~10日目ごろに診察(卵胞の発育により数回必要な場合あり)
  5. 卵胞発育を確認し、採卵決定
  6. 採卵、卵子凍結(採卵は、痛みのないように静脈麻酔下で行います)
  7. Grace Bankにて保管

卵子の凍結保存

卵子の凍結保存は採卵当日に胚培養士が行います。採卵で採取した未受精卵子が「成熟した卵子」であることを確認した後、急速凍結法(ガラス化法)を行います。卵子が成熟卵子ではない「未熟卵」、または「変性卵」の場合は原則、凍結保存ができません。1本の凍結デバイスには最大で3個までの未受精卵子を凍結保存できます。高濃度の凍結保護剤を含む溶液中に未受精卵を入れ、その溶液と共に凍結デバイスに乗せて液体窒素(-196℃)に入れて凍結します。凍結した未受精卵は液体窒素に浸漬したまま保存します。

安心の保管体制

当クリニックは卵子凍結保管サービス『Grace Bank』と提携しており、凍結された卵子は『Grace Bank』の提携先である株式会社ステムセル研究所の大型タンクで一括保管する選択肢があります。

Grace Bankの特徴

  • 国内最大規模の細胞保管施設
  • 最新鋭の凍結保管技術
  • 24時間対応の監視・記録・緊急時体制
  • 突然の地震や津波にも強いエリア
  • 最も高いレベルの建築物耐震基準クリア
  • ALSOK社による24時間警備体制

卵子凍結のリスクについて

1. 凍結・融解操作による凍結障害

未受精卵・胚は凍結および融解の際にダメージを受ける可能性があるため、凍結保存した未受精卵・胚の全てが良い状態で移植できるとは限りません。凍結障害を起こした場合には、移植はキャンセルとなります。未受精卵・胚の脆弱性に起因する凍結障害については保証できないことをご了承ください。

2. 胎児への影響

現時点では凍結胚による出生児と、それ以外の出生児との先天異常の発生率はほぼ同等であると言われています。しかし臨床応用されてまだ歴史が浅い治療法であるため、出生児の身体的、精神的発達の問題点や長期の影響(たとえば次世代、次々世代)については不明である点をご了承下さい。

卵子凍結の費用例

  • ※費用については個人差があります。表に記載されている金額は平均値です。
  • ※上記金額は全て税込です。また予告なく変更する場合があります。
項目 治療費(税込)
初診 20,900円~
再診 1,430円/回(平均5回)
採卵 基本料金55,000円
個数加算22,000円
×
採卵個数(10個以上同一料金)
超音波検査 2,200円/回(平均4回)
血液検査 25,300円
排卵誘発 123,090円~
局所麻酔 16,500円
静脈麻酔 33,000円